かわいいワンちゃんとの生活が始まると健康診断や予防接種のために多くの子犬たちは動物病院を訪れます。新しい家族を迎え入れたオーナー様は、楽しく、賑やかな生活に満足である一方、やんちゃな愛犬のいたずらに翻弄され、少々戸惑いがあることもあります。多くの疑問や質問を専門家に相談したい気持ちでオーナー様は動物病院を訪れますが、私たちは多忙な業務に追われ、じっくりと話を聞けないことも多く、表面的なしつけのお話しかできないことに憤りを感じていました。そこで当院では、2010年からスタディードッグスクールより講師をお招きして、子犬のしつけ方教室を定期的に実施することになりました。
子犬はおよそ生後2か月齢から6か月齢頃までが人間社会へ適応するための大切な期間になります。一方、同時期は母子免疫が消失し、予防接種により免疫を強化するための移行期間でもあり、言い換えれば感染症などの病気に罹患しやすい時期とも言えます。そのため現在でもペットショップなどでは、ワクチン接種が完了するまで外出および他の犬との接触をしないよう指導することが多く、大切な社会化ができないまま子犬は成長するため、問題行動が発生してしまう状況にあります。当院ではスタディドッグスクールとの協力体制の元、一定の実施基準を設けた上で、月齢の早い時期より院内においてしつけ方教室を実施しています。そのため、病気の感染拡大をさせることなく、しっかりとした社会化経験を積むことができると同時に、若齢時より動物病院での楽しい体験があるため、病院嫌いが解消されるようです。当院にてしつけ方教室を卒業されたワンちゃんは、その後の診療などにも協力的なことが多く、動物たちと病院双方にとってメリットがあります。また、診察時間では対応できない多くのしつけに関する疑問に対しても、少人数クラスで頻繁にクラスを開催しているため、家庭ごとの問題に対して個別の質問をすることができ、オーナー様の心配も解消されているようです。
スタディドッグスクールが実施しているしつけ方教室は、従来からあるような"犬の訓練"といった強制的な側面は少なく、愛犬の行動や特性をオーナー様に理解してもらい、より良い関係を構築するための学びの場を提供しているように感じます。難しい言葉は極力使用せず、オーナー様が興味の湧きそうな話題を混ぜながら進行しますので、参加された子供たちも理解できるため、皆楽しく真剣に話を聞いています。まさに、家庭犬のためのドッグトレーナーと言えます。
ここ数十年においてペットフードや獣医療は格段に進歩し、ワンちゃんの健康寿命は飛躍的に伸びてきている一方、今も多くの方は、犬のしつけ方=お座り、お手、伏せ から進歩していません。ペットオーナーのマナーの悪さやモラルの低さを感じることも多々あります。また、依然として日本では犬種ごとの特性を理解せず、ペットを流行りや見た目の可愛さだけで安易に購入することが多く、飼育後にトラブルになることも見受けられます。専門的なドッグトレーニングに関する知識は当然のことながら、犬種ごとの特性や病気など総合的な知識を身に着けたドッグトレーナーが増え、動物病院のみならずブリーダー、ペットショップ、ペットサロンなどあらゆる環境において活躍することで、日本の多くの方がペットを飼いたいと思える社会を構築できるよう互いに協力できることを願ってやみません。スタディドッグスクールはまさにそれを可能にしてくれるドッグスクールであると確信いたします。
木下動物病院
神奈川県相模原市にあるドッグラン、ペットホテル、トリミング、しつけ教室等も対応している動物病院です