犬のトレーニングに関する用語や道具、動物行動学に関する用語をまとめた「犬の百科事典」です。専門学校などで愛玩動物看護師むけに講義を行ったり、教科書を執筆している講師が学術的な定義を基に、客観的かつ端的にまとめてありますのでご活用下さい。
優位性攻撃行動(ゆういせいこうげきこうどう)
犬同士の群れ内での順位の形成や維持のために示される
攻撃行動。優位性とは、2頭間における力関係で、自らの資源や価値のあるもの(食べ物、寝床、おもちゃなど)への優先権を意味する言葉である。優先権を阻害される葛藤や不安によって発現すると言われている。
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遊戯行動(ゆうぎこうどう)
維持行動の一つで、1個体で物を使ったり体を動かして遊ぶ個体行動と、他個体(他の犬や人など)と遊ぶ社会行動がある。犬の場合、
ネオテニー(幼形成熟)の結果、成熟後も遊戯行動の頻度が高い動物である。他個体との遊びでは、探査、敵対、親和などの社会行動に組み合わさって見られるが、順位の獲得や攻撃性などの目的は持っていない。特に
社会化期における同腹子同士や母犬との遊びは、噛む力の制御や
ボディーランゲージの習得などにおいて非常に重要な意味を持つと言われている。
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誘発法(ゆうはつほう)
動物が目的の
行動を示すのを待ち、
強化子を与えることで新しい行動を獲得する手法。例えば、犬に座る行動を
学習させる際、犬の座る反応を待ち、座ったタイミングに強化子を与えるトレーニング方法がこれに当たる。誘発法の中には、
自動反応形成といって、
古典的条件付けを用いた手法もある。
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要求吠え(ようきゅうぼえ)
吠えることで食物やおもちゃ、人からの関心など犬が要求する結果が得られた経験をすることで、吠え
行動が
強化(オペラント条件付けにおける)され定着した状態。一般的に三項随伴の結果を変様させることで対処することが多い。
陽性強化法(ようせいきょうかほう)
オペラント条件付けにおける
正の強化を中心として行われるトレーニング手法のこと。
陰性強化法に比べ、一般的に用いやすく、動物福祉の観点からも推奨される方法である。「ほめるしつけ/トレーニング」と言われることが多く、
快刺激(フードやおやつなど)のみを使用する方法と勘違いされることが多いが、不快刺激を与えないことと同義ではない。
四項随伴(よんこうずいはんせい)
三項随伴性の
弁別刺激に四つ目の刺激が関連づくことをいう。犬のトレーニングの場合は、周りの環境刺激が四つ目の刺激になることが多く、家の中でオスワリができても、信号待ちの時にできないのはそのためである。
執筆者:
鹿野正顕(学術博士)、
長谷川成志(学術博士)、
岡本雄太(学術博士)、
三井翔平(学術博士)、
鈴木拓真CPDTーKA